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【名刺入れ DIY 50枚】仕事道具として選んだレザーケース
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【名刺入れ DIY 50枚】仕事道具として選んだレザーケース

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【デザイナーのリアルな持ち物】自分で使って作る、地味な仕事道具まとめ。

人生には時々**「なぜか一日にして突発的かつ大量に紙の名刺が必要になる日」**というのが訪れます。

今回は、そんな急な大型現場で「40人以上に名刺を配る」ことになり、手持ちに適当な名刺入れがなかった僕が、**「だったら自分の理想通りの名刺入れをレザークラフトで作ってしまおう」**と思い立ち、試行錯誤の末に完成させたレザーケースのお話です。

50枚もの名刺をスマートに収納しつつ、一枚革構造で薄く、丈夫に仕立てる。デザイナーの視点で「道具」としての構造を突き詰めた、地味けれど愛着の詰まったものづくりブログ記事をお届けします。


1. 趣味としてのレザークラフトと、デザインの共通点

そもそも、僕がレザークラフトを始めたのは完全にプライベートな趣味がきっかけでした。

何か新しい手縫いの技術や素材の知識を身につけたくて革と道具を揃えたのですが、最初に切った革の断面(コバ)はガタガタ、縫い目はガタツキ、お世辞にも「美しい」とは言えないクオリティでした。

でも、それで良かったんです。

「最初は誰でも下手くそ。けれど一度身につけた構造的思考とクラフトマンシップは、一生失われないスキルになる」

画面上のピクセルを1px単位でコントロールする作業と、コンマ数ミリの革の厚みを削ぐ(漉く)作業は、使う道具が違うだけで脳の同じ部分を使っている感覚があります。

「モノの構造を解剖し、どう組み立てれば美しく、かつ機能的になるか」。

この思考プロセスが身についていると、自分が日常で使う「仕事道具」に求める基準も自然とシビアになっていきます。市販品を探して「ここがもう少しこうだったらいいのに…」とモヤモヤするくらいなら、自分の手で100%理想の形に落とし込んだ方が早いし、何より楽しいのです。


2. 突如訪れた「名刺40人斬り」という課題

普段持ち歩く名刺は予備の数枚程度。小さなパスケースのポケットに突っ込んでおけば事足りるような生活を送っていました。

ところが先日、ある大きなプロジェクトのキックオフ兼、業界関係者が集まる大型のオフラインイベント(交流会)に参加することになりました。

事前に共有された参加者リストや規模感から察するに、最低でも40人以上の方々と挨拶を交わすことが確定。

「これは……完全に名刺が足りないし、そもそもちゃんとした名刺入れがない。」

デザイナーという職業柄、自分の名刺そのものをデザインして印刷手配すること自体は、朝飯前です。自分のブランディングに合わせた紙質を選び、余白を考慮し、綺麗なタイポグラフィでレイアウトして、入稿データを作成する。これは日常茶飯事の作業。

問題は**「その名刺をどう持ち運ぶか」**です。

40人以上に確実に渡すためには、予備を含めて最低でも50枚は収納できるケースが必要です。 しかし、一般的なスマートなレザー名刺入れは収納枚数20〜30枚程度が主流。逆に50枚以上入る大容量タイプとなると、通しマチ(アコーディオンのような厚みのあるマチ)がついていて、ポケットに入れると「カツ箱」のようにゴツく膨らんでしまうものばかりでした。

「50枚入る大容量でありながら、胸ポケットやジーンズのポケットに入れてもシルエットを崩さないくらい薄くしたい」 「現場でサッと取り出せて、名刺交換の仕草がスムーズに見えるデザインにしたい」

既製品をリサーチしても、僕のこのワガママな条件を満たすものは見つかりませんでした。

「よし、作ろう。」

必要な条件と枚数がはっきりしているなら、自分の手で設計から仕立てまで完結させるのが一番の近道です。


3. 「マチが無いようである」設計思想

大容量の名刺入れを作ろうと考えたとき、最大の難所となるのが**「マチ(厚み・ゆとり)の処理」**です。

名刺50枚の厚みは、紙の坪量(厚み)にもよりますが、おおよそ15mm〜20mm近くになります。 これを無理やりマチのない袋に押し込むと、革が突っ張って名刺の端が折れてしまったり、取り出す時に引っかかってスムーズに出せなくなります。

かといって、側面や底面にがっつりとした側マチ(風琴マチや通しマチ)をパーツとして縫い付けると、パーツ数が増えて構造が複雑になり、革の重なり部分が増えるせいで、**「名刺が入っていない状態でも分厚い」**という本末転倒な事態に陥ります。

そこで僕が考案したのが、**「マチが無いようである(無段階に広がる)構造」**です。

側面をガチガチに縫い固めない

通常のケースのように側面の端から端までをステッチで固定してしまうと、容積の限界が固定されてしまいます。 今回は、折りたたんだ革の柔軟性を活かし、名刺が入っていないときはぺたんことフラットになり、50枚入れたときだけ自然な立体に膨らむような「たわみ」を計算して折り目を設計しました。

レターセット(封筒)のような幾何学フォルム

見た目のモチーフにしたのは、シンプルで普遍的な「レターセット(手紙の封筒)」です。

無駄な装飾を一切削ぎ落とし、直線とゆるやかな曲線のみで構成された封筒型のフォルム。 フタ(フラップ)を開けると、中の名刺がすっと立ち上がり、指先で一枚ずつ滑らせて取り出しやすい切り込み(アール)を配置しています。

ビジネスの現場で名刺入れを取り出した瞬間、相手の視線は少なからず手に注がれます。 その時に、過度なブランドロゴや無駄な金具が見えるのではなく、**「上質な一枚の革で包まれた封筒」**のような静かな存在感があること。デザイナーとして、相手に与える視覚的なノイズを極限まで減らしたかったのです。


4. なぜ「一枚革(1 Piece)」にこだわるのか?

今回のDIYにおける最大のこだわりであり、設計上の難易度を高めたのが**「一枚革で作る」**という制約です。

レザークラフトをやったことがある方ならお分かりいただけると思いますが、複数のパーツ(本体、マチ、ポケット、フタなど)を切り分けて縫い合わせる方が、型紙の配置効率も良く、パーツごとの厚み調整(漉き)も簡単です。

しかし、あえて**「1枚の繋がった革を折り紙のように畳んで形にする」**アプローチを選びました。

理由は明確に3つあります。

1. 圧倒的な耐久性(破損リスクの排除)

レザー製品が破綻する原因の9割は、「縫い糸の切れ」か「接着面の剥がれ」です。 パーツを細かく分ければ分けるほど、接合部(縫い目)が増え、そこが経年劣化の弱点になります。 一枚革構造であれば、革自体の引張強度をダイレクトに活かすことができ、糸にかかる負担も最小限に抑えられます。長年仕事道具としてガシガシ使い込んでも、型崩れしにくく、縫い直し等のメンテナンス頻度も激減します。

2. 断面(重なり)の厚みを最小化する

パーツを重ねて縫い合わせると、どうしても「革の厚み×パーツ数」だけコバ(断面)が分厚くなります。 1.5mmの革を3枚重ねれば、それだけで4.5mm。 一枚革を折りたたむ構造にすることで、無駄な革の重なりを排除し、全体のシャープな薄さを維持することができるのです。

3. ミニマルな美学

1枚の平板な革が、折り目と数箇所の手縫いだけで見事な3次元の「箱(ケース)」へとトランスフォームする美しさ。 このプロセスの美学は、Webデザインにおける「シンプルなコードで堅牢なコンポーネントを組み上げる」感覚と完全に一致します。


5. 実際の製作プロセス:型紙から仕立てまで

ここからは、実際に僕がこの名刺入れを仕立てていったプロセスを少しマニアックにご紹介します。

素材選び:適度なハリとコシを持つオイルレザー

使用した革は、1.5mm厚の成牛革(ヌメ革/オイルレザー)。 柔らかすぎると50枚の名刺の重さに負けて型崩れしてしまい、硬すぎると折り紙のような折りたたみができず、フタの開閉がギシギシしてしまいます。

手油や経年変化(エイジング)によって、使えば使うほど深みのあるツヤが出てくる、植物タンニン鞣しの革を厳選しました。

裁断と「床磨き・コバ磨き」

型紙通りに革を切り出したら、裏面(床面)と断面(コバ)を丁寧に磨き上げます。 トコノール等の磨き剤を塗り、ウッドスリッカーで繊維を限界まで締め締めてツヤを出します。

この「地味な下処理」をどれだけ妥協せずにやるかで、完成したときの「プロっぽさ(道具感)」が180度変わります。目立たない部分にこそ神が宿る、デザインと全く同じです。

折り筋付けと手縫い(サドルステッチ)

一枚革を折り紙のように折りたたむための「折り筋」を水で少し湿らせながら入れ、形を整えます。

縫製は、レザークラフトの醍醐味である手縫い(サドルステッチ)。 2本の手縫い針を使い、8の字を描くように糸を交差させて締め上げていきます。万が一、一本の糸が切れても解けない堅牢な仕上がりになります。

糸は革と同系色のポリエステル麻糸を使用し、ステッチ自体が主張しすぎないよう目立たないピッチ(縫い目幅)でシンプルに仕上げました。


6. 実戦投入:40人との名刺交換を終えて

こうして突貫かつこだわり抜いて完成した「枚数無段階・一枚革の名刺入れ」。 さっそく、目的であった40人以上が集まる現場へ持ち込み、実戦投入してきました。

結論から言うと、**「最高の仕事道具」**として完璧に機能してくれました。

1. 圧倒的な取り出しやすさ

50枚ギッチリと名刺を詰めた状態でも、開口部がレターカットのように広く開くため、親指で滑らせて1枚だけを「スッ」と取り出す動作が非常にスムーズ。 相手の前でモタモタすることなく、スマートに名刺交換の動作へ移行できました。

2. もらった名刺のストックも余裕

名刺交換で一番困るのが、「自分の名刺を渡したあと、相手からもらった名刺をどこに収めるか」です。 このケースは、自分の名刺(50枚)が減っていくにつれてケース内の容積が自動的に空いていくため、いただいた名刺をそのまま後ろ側にスムーズに収納できます。 大容量だからこそ、40人分の名刺を一切折り曲げることなく、すべてこの一つのケース内に安全に持ち帰ることができました。

3. ポケットに収まる薄さ

50枚入っているとは思えないほど、全体のシルエットがコンパクト。 ジャケットの内ポケットに入れても胸元が変に膨らむことがなく、立ち姿をスマートに保つことができました。

そして何より、名刺交換の際にデザイナーの参加者の方から**「それ、すごくシンプルな名刺入れですね。どこのですか?」**と声をかけていただけたのが、作って一番嬉しかった瞬間です。

「あ、これ自分で作ったんですよ。一枚革で50枚入るように設計して…」という会話から、デザインのこだわりやものづくりの話へと花が咲き、名刺交換以上の素晴らしいコミュニケーションを生み出すきっかけになってくれました。


7. まとめ:自分で作って使う「地味な仕事道具」の愛着

今回製作した名刺入れは、けっして華やかでも、派手なブランドロゴがついているわけでもありません。

一見すると、ただのシンプルな革の封筒。 けれど、そこには**「50枚入るのに薄い」「一枚革で壊れにくい」「無駄なパーツがない」**という、実用性を極限まで高めたデザイナーなりの設計思想が凝縮されています。

現代の仕事道具は、PCやタブレット、スマートフォンといったデジタルデバイスが中心です。 しかし、そうしたデジタル環境の隙間を埋める「名刺入れ」や「ペンケース」「デスクマット」といったアナログな地味な道具たちこそ、自分の手に馴染むもの、妥協のない構造のものを使うことで、日々の仕事のテンポやモチベーションが大きく変わると実感しています。

レザクラという趣味を通じて得た「構造を見極める目」と「手を動かすスキル」。 これからも、自分が現場で必要とする「地味だけど手放せない仕事道具たち」を、少しずつ自分で作って、使い倒して、育てていこうと思います。

もしみなさんも「市販品に理想のサイズがない…」と悩む道具があったら、型紙を起こして自分の手で作ってみるという選択肢、かなりおすすめですよ。

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